京大 情報学研究科 知能情報学専攻に合格しました

2020年入学の京大 情報学研究科 知能情報学専攻に合格したので院試に向けてやったことをまとめておく。

出願人数

定員33名だというのに、出願者は103名。知能情報学専攻だけ倍率3倍超え… 自分もこの手のブログにかなり助けられたので、誰かの参考になればいいなと。

1,2月

自分の大学の教授の紹介でMITに留学して現地で研究できるかもしれないという話をいただいていたので、卒業の時期を遅らせてアメリカで1年過ごそうと考えていた。なので、学部卒業後、大学院に進学したいとだけ思っていたが具体的には何も考えていなかった。

3月

色々と事情があり、MITの話は3月になって流れた。3月は丸々1ヶ月、研究室の友人とヨーロッパを旅する予定があったので、旅しながら卒業後どうするか真剣に考えた。

4月

外部の大学院に進学することを決めて、急いで情報収集を始める。当時志望校は東工大に決めていた。よって、直前まで東工大の受験対策を進めることになる。僕は数学力が致命的なレベルで、線形代数を大学で履修したことすらなかったので、マセマの線形代数学でコツコツと始めることにした。

マセマ線形代数

思いのほかマセマの解説がわかりやすかったのですっかり惚れ込んでしまった。この参考書に学部1年生で出会いたかった。 微分積分学も同様に試験範囲だったので、これもまたマセマで勉強を始めた。

マセマ微分積分

また、TOEICも受験した。東工大の受験を中心に考えていたので、4月が最初で最後のチャンスだと思っていたが、京大だと院試ギリギリまで待ってくれるようだった。その事実は当時知らなかったので、4月のTOEICで点数が取れなかったら院進は諦めようと思っていて受けたスコアは840。専門科目頑張ればどうにかなると思ったので、TOEICは終了した。

5月

オートマトンと形式言語の対策を少しずつ始めた。名古屋大学の講義のサイトにとても助けられた。通っている大学の講義と並行して学習を進めた。名古屋大のリンク配下に貼っておく。

名古屋大学-オートマトン

受験校を決める上でNAISTも見ておきたかったので研究室訪問をした。また、京大にも興味があったので、アポをとったところ時間をとっていただけたので、同じタイミングで訪問した。 訪問後、京大の魅力に一気に惹かれ、受験を考えるようになった。

京大の試験範囲

◯情報学基礎(100点)  下記2分野から2題とも回答。

  • 線形代数、微分積分
  • アルゴリズムとデータ構造

◯専門科目(100点)  下記6分野から2題選択。

  • 認知神経科学、知覚・認知心理学
  • 統計学
  • パターン認識と統計学
  • 情報理論
  • 信号処理
  • 形式言語理論、計算理論、離散数学

◯TOEIC(100点)

東工大の試験範囲

また、東工大 情報理工学院 情報工学系の試験範囲も以下にまとめる。

◯必須問題(600点)

  • 微積分学、線形代数学、確率統計
  • 数理論理学、オートマトンと形式言語
  • データ構造とアルゴリズム、プログラミング言語

◯選択問題2問のうち1問選択

  • 論理回路理論、コンピュータアーキテクチャ
  • フーリエ変換、ラプラス変換、制御システム

◯TOEIC(100点)

東工大は成績優秀な内部生は筆記試験免除という制度がある一方で、京大にその制度はなく内部生も外部生も関係なく院試の点数だけで合否が決まるようだった。京大に挑むことは少し無謀かなとも思ったので、東工大対策を中心に進めることにした。

また、京大の選択問題は、東工大の試験範囲とやや被っていた「統計学」、「形式言語理論、計算理論、離散数学」を選ぶことにした。

6月

東工大の過去問を少しずつ解き始めたが、なかなか難しく絶望していた。 アルゴリズムの勉強は下のテキストを使った。わかりやすかった。

アルゴリズム

統計学を勉強するのにどのテキストを使おうか迷って調べたところ、以下のテキストがなかなか良書であることを知った。

統計学入門

このテキストでもよかったが当時の僕はマセマに惚れ込んでしまっていたので、統計学もマセマで勉強することにした。初学者にもとんでもなく優しく、わかりやすかった。

統計学マセマ

7月

東工大、京大の過去問を解き進めるべきだったが、自分は基礎がまだまだだったので問題集で繰り返し演習を続けた。 試験まであと1ヶ月を切ったところで、数理論理学とグラフ理論にまだ手をつけられていないことにかなり焦っていた。 数理論理学の勉強には下のテキストを使おうと思ったが、少し難しかったのと時間がなかったので諦めた。

数理論理学

結局下のテキストを使ったが、正直院試レベルには全く達していないだろう。

初めての論理数理学

グラフ理論は京大の学部の授業で使われているテキストを一週間ほどで仕上げた。

グラフ理論

過去問を解き進める中で、京大の問題はそれなりに解けるようになっていたので、挑戦校の予定だったが本命校に切り替え、真剣に対策した。 研究室と図書館と家を行き来する毎日。今となってはいい思い出。

8月

8/1 自分の大学の院試合格。ひとまず新卒ニートは回避したので安心。

5日に京大の院試があったので、8/2,3は生活リズムを整えることに集中した。直前になりすぎると何を勉強していいかわからなくなる。 8/4(院試前日)は烏丸御池のビジネスホテルに宿泊して温泉に入ってひたすら祈った。笑 勉強しようとしてもそわそわするのでまるで集中できなかった。

京大院試本番

情報学基礎

線形代数と微積分が思いの外簡単で逆に焦る。ただの固有値の問題で検算したところ合わなかったので、さらに焦る。 あまり数学が得意でないわりには解けた。 続いて、アルゴリズムの問題、完全に理解していたマージソートと文字列探索だった気がする。心の中でガッツポーズを決めて完答した。

専門科目

問題を開いた瞬間オワタと思った。統計学はやや苦手だった検定の話。そして、過去問とは雰囲気がまるで違う。もう一つはグラフ理論だったが、唯一自分の学習していないグラフ彩色だった。 わざわざ高い新幹線代、受験料、宿泊代払って京都まで来てこのざまかー、大人しく東工大だけ受ければよかったなと思った。しかし、嘆いても仕方ないなと思ったので、できる問題だけ埋めておくことにした。 統計学はあまり自信がなかったが全て埋めることができた。次にグラフ彩色、これに関しては本当に初見。しかし、高校数学を思い出しながら意外と大門の7割近く埋めることができた。

ここでタイムアップ。 正直、厳しいだろうなと思っていたが、自分なりの答えを埋めて少し期待してしまう自分がいた。試験が終わって学業の神様で有名な北野天満宮に直行しお祈りして1日目終了。

口頭試問

2日目の口頭試問の対象者は筆記試験でボーダー付近の者だけが呼ばれるという噂があったので、もし自分が受かるなら対象者だろうなと思っていた。対象者でないならおわり。あるかどうかもわからない口頭試問用にスライドを作成して対策し、真夏の暑い京都の街にスーツを着て繰り出した。ここまでして対象者じゃなかったら泣けるなと思いつつ、対象者だったら緊張で押しつぶされて逆に泣けるなと、どちらにしても泣けるわと思いながら京大へと向かった。

そして、口頭試問対象者の受験番号が発表された。 なんと、自分の番号がある… 驚いた。 本番まで残り2時間、時間はなかった。

この時とっさの判断で、メールで過去問のやり取りをさせていただいていた志望する研究室のPh.D.の方に連絡を取ることにした。メールを送ると快く迅速に対応していただくことができ、頂いたアドバイスをもとに対策した。

対象者の集められた部屋には10人ほど集まっていた気がする。 いよいよ自分の番だ。人生で一番緊張していたが、後悔しないように堂々とした態度で大きな声で話すことだけ特に意識した。口頭試問で面接官は2対1もしくは4対1くらいかなと勝手に想像していたが、会場には情報学研究科のほぼ全員(?)の先生方が集まられていたので、腰が抜けるかと思った。世界的に有名な教授陣に囲まれる中、自分の取り組みたい研究について必死にプレゼンした。

今後

最終的に合格をいただけたが、ボーダーギリギリであることは間違いないので、今後も気を抜かないようにしたい。 また、僕は学部では機械工学を専攻しており、院試に当たって勉強した内容はほぼ独学で大変だったが、自分の興味のある分野だから専攻を変えてまで頑張れたと思う。 受験に当たって相談に乗っていただいた大学の同期、研究室の同期、留学先で知り合った方々、あと一緒に戦ってくれた同じ学科のH氏には感謝している。ありがとう。 あともちろん、見てないと思うが、両親には一番感謝している。就職せず、付属の大学院に進学するわけでもなく、外部受験を許してありがとう。かなりリスクはあったので、心配させてしまって本当に申し訳ない。

来年4月から憧れの地で自然言語処理の研究ができることになり、本当に嬉しい。 ニート回避できてマジでよかった。

MLエンジニア。教育系のサービスを作っています。